町の価値を看板で創る
その町の理解を深めていくような看板ってすごく価値があるなと思っていて、仕事では観光看板制作にも関わっています。
例えば去年、石見銀山の看板やウェブサイト用の英文テキストを書きました。あそこは行ってみると広大な土地に点々と遺産があるんですね。それの多くが跡地になっていて、建物の土台しかないとか、ほんのちょっとの土台の上に森ができているとか、説明文がないと遺産の価値が分からない状態でした。そこで、遺産同士を線でつなぐストーリーを作っていくことにしたんです。
1枚1枚でも成立していながら、流れで見るとストーリーになっているような看板を提案しました。そうすると、今はもう跡地しかないから、当時の状況が分からなかったところに、そこに暮らしていた人たちの営みが見えるようになってくるんです。なんとなく“人”が想像できるようになるんですね。
コロナ禍の観光はおそらくお金や時間があって知的好奇心の高い人から戻ってくると思うので、そういう人たちの興味を湧かせるものがどんどん増えていくと良いなと思っています。
このランナーズインフォメーション研究所の取り組みも、ひとつひとつの道に付加価値を付けていると思うんですね。そこがすごくいいなと思いますし、必要な取り組みと感じています。
外国人の観光客にとってもストーリーのある看板って必要だと思うんです。そもそもの前提として、外国人は日本人と持っている知識や学んできたことが違うわけだから、“なんとかの誰々”と言っても分からないですよね。。日本人の目だけで見ては、なかなか分からないものも多いなかで、日本人は真面目に短い看板の中にたくさんの情報を詰め込んで説明しがちで、もっと分からなくなってしまう。だったらこういうアプローチにしませんか、という提案をしています。それがストリートにあるのは素敵だなと思っています。
東谷彰子(タイムアウト東京副代表)
幼少期はマニラで、中学高校はバンコクで過ごす。 1996年に帰国し、早稲田大学教育学部英語英文学科に入学。卒業後はTOKYO FMに入社。1年間の秘書部勤務を経て、ディレクターとして多様なジャンルの番組制作を担当。2010年1月、ORIGINAL Inc.入社。タイムアウト東京コンテンツディレクターとして、取材、執筆、編集、企画営業、PRなど幅広い分野で活躍。国内外にアーティストから学者、スポーツ選手まで幅広いグローバルなネットワークを持つ。企業や省庁、自治体向けの高品質な多言語対応は高い評価を得ている。
Akiko Toya (ORIGINAL Inc. Executive Vice President)
編集:菊池慶子・小林彩夏
撮影:小林彩夏
製作:ランナーズインフォメーション研究所
Editor: Keiko Kikuchi, Ayaka Kobayashi
Photography: Ayaka Kobayashi
Production: Runner’s Information Research Institute